カップ酒の始祖にして今なお頂点に君臨する「ワンカップ大関」。 興味のある人もない人も、「One CUP OZEKI」と白文字でプリントされたあの青いラベルは一度は見たことがある思います。
しかし、これは興味のある人しか知らないと思いますが、ワンカップ大関には多くのバリエーションがあります。 1種類だけしかない、と思っている人、多いでしょう? それではいつか困ることになるかもしれませんよ。
「俺って酒好きだけど地酒しか飲まねーし、ワンカップなんて知らなくても全然困らねーぜ。」
なんて思ってませんか。 将来のことなんて誰にもわかりません。
いつか路上やコンビニの駐車場なんかで仲間と酒盛りすることになったとしてですよ、地酒なんて持っていけますか?場違いでしょ。 やっぱそういう時はワンカップです! 「おい、ワンカップ買ってこい!」 と言われた時に、 「上撰と佳撰、どっちがいいっすか?それともジャンボ行っときます?」 なんて返したら、「おっ、こいつはわかってる」と路上仲間の間で株が上がるでしょう。
まあ、異論はあるかもしれませんが、ワンカップについて知っておいて損することはありません。
ワンカップ大関は1964年の販売開始時に、特級と一級の2種類でスタートしましたが、現在までに限定発売や販売終了の商品も含めると数十種類のワンカップ大関が存在しています。 数多いワンカップブランドには安価ではあるが糖類や酸味料が添加された(言っちゃ悪いが)あまり質の良くない商品から、従来のカップ酒のイメージを覆す大吟醸酒まで、幅広い商品が揃っています。
ワンカップは「金のない(あるいは家のない)オッサンの飲む安くて不味い酒」というイメージを持っている人もいるでしょうが、それは今や不正解と言わざるを得ません。
ワンカップ大関大吟醸は別格にせよ、ワンカップブランドで現在最も標準的な商品「ワンカップ大関 上撰」も、悪い酒にありがちな糖類や酸味料は添加されていません。
美味いか不味いかは人それぞれの判断がありますが、スペック的にはそれほど悪い酒とは言えません。
とまあ、私も偉そうに書いていますが、ワンカップ大関を飲んだことは数回だけで、それぞれの味や特徴についてそれほど詳しいわけではありません。
将来のことを考えて、ここいらでワンカップ大関を飲み比べることにしました。
<今回試したワンカップ大関の種類>
現在ワンカップブランドでスーパー・コンビニなどでよく見かける商品を集めました。 (カッコ内は税別メーカー小売希望価格) ●ワンカップ大関 上撰(218円) ●ワンカップ大関 佳撰(197円) ●ワンカップ大関 淡麗辛口(157円) ●ワンカップ大関 大吟醸(不明) ●ワンカップ大関 ミニ大吟醸Premium(150円) この中でスタンダード商品は上撰だと思われます。どこのスーパー・コンビニでも置いてあります。 それに比べ佳撰は販売しているところは少ないです。
他に ●ワンカップ大関 ミニ ●ワンカップ大関 ジャンボ という商品もよく見かけますが、それってワンカップの上撰か佳撰のサイズ違いの商品じゃないの?と思って買いませんでした(実は誤解)。
参考のため、飲み比べる前に、大関のお客様相談室に電話してワンカップについて色々話をうかがいました。 以下が概要です。
●ミニとジャンボは品質的には佳撰クラスだが、中身は佳撰とは違う ●ワンカップ大関上撰はワンカップではない大関の「上撰 金冠」と中身が同じ ●佳撰も「佳撰 金冠」と中身は同じ ●ワンカップ大関大吟醸は、ワンカップでない大関の大吟醸とは中身が違う
ややっこしいのですが、大関さんも色々知恵を絞って商品を出しているのだなあと感じました。 お客様相談室の担当者の方、親切に教えていただきありがとうございました。
<実際に飲んでみました>
日本酒は冷やしたり温めたり、温度を変えて飲むことが多いですが、ワンカップは家で飲む酒というイメージがないので、そのままの温度で味見しました。 実際、大関の公式サイトを見るとそれぞれのお酒の飲み方が掲載されていますが、購入したすべての商品で常温OKになっていたのでこれでよしとします。 (…と思いましたが、一応上撰だけは冷とホットでも飲んでみました。)
●ワンカップ大関 上撰
近所のスーパーで168円(税抜き)で購入。 なお、公式サイトによればメーカー小売希望価格は218円(税抜き)です。
おそらくワンカップの最もスタンダードな商品と思われる上撰なので、これは他商品の比較の軸になるはず。 心して味わいました。
★参考(公式サイトより) アルコール度数:15% 日本酒度:0 酸度:1.4 味わいの特徴:普通・やや淡麗
まずは常温で。 甘い! なんというか、砂糖みたいな甘さ。 でも、砂糖など糖類は添加されていないので米由来の甘さなのだとは思います。 甘さとともに日本酒特有の風味がしますが、余韻は短く、フッと消えます。
さっぱりしたお酒であり、飲めと言われたら何杯でもいけそうです。 しかし、敢えて自分から飲みたいかというと…
次は冷やして飲んでみました。 甘みが控えめになりました。 個人的には甘い酒はあまり好きではないので、冷やしたほうが好みです。
次はレンジで温めました。 甘さ、香りがボリュームアップしました。 常温だとさっぱりしすぎて物足りなかったですが、温めるとまだマシです。
なお、横で見ていた日本酒初心者の嫁が言いました。
「なんか不味そう…」
「いや、不味くはないで。ちょっと薄味やけど。飲んでみたら?」
(一口飲む)
「不味い。獺祭だったら飲めるけど、これは無理!」
「そうか。どの当たりが不味いんや?変な味とかせんと思うけど」
「臭い」
「…」
よく分かりませんが、臭いらしいです。 でも、これで臭かったらほとんどの日本酒は臭くて飲めないと思います。 飲めるとしたら獺祭のようなフルーティーな香りの強い大吟醸酒だけなのでしょう。
個人的には上撰大関は甘くてスッキリしているので初心者でも飲みやすいと思っていたのですが、そんな単純な話でもないようです。 参考になりました。
●ワンカップ大関 佳撰
ファミリーマートで197円(税抜き)購入しました。 なお、公式サイトによればメーカー小売希望価格は197円(税抜き)です。さすがコンビニ。定価販売です。 上撰とは21円の違いがありますが、味もその分だけ劣るのでしょうか?
★参考(公式サイトより) アルコール度数:15% 日本酒度:0 酸度:1.3 味わいの特徴:普通・やや淡麗
うーん、上撰ほど甘くありません。その代わり旨味が強いです。 スッキリしているのは同じです。
個人的には佳撰の味のほうが好きかもしれません。 少なくとも、佳撰が上撰に劣っているとは感じませんでした。
ところで、上撰と佳撰はラベルがそっくりですが、色が少しだけ違ってて、上撰のほうが光沢があります。 また、佳撰はラベル横がオレンジ色になっています。
ちょっと話はずれますが、この佳撰は見つけるのが大変でした。
どこのスーパー・コンビニでも上撰は売っているのですが、佳撰は見当たりません。 もしかしたら販売中止になったのかと思って、大関のお客様相談センターに電話しましたが、そうではないと言っていました。
安い商品だったら、スーパー玉出に売ってそう、と思って行ってみましたが、ここですら上撰しか取り扱ってませんでした(注:スーパー玉出とは大阪で色んな意味で有名な激安スーパー) 関係ないですが、カップ酒の中でも比較的高いワンカップ大関上撰が売れ残っていて、より安い月桂冠月などの商品のほうが売れているのは玉出らしいと思いました。
結局10件ぐらい回って、最終的に少し離れたところにあるファミリーマートで佳撰を見つけました。
●ワンカップ大関 淡麗辛口
近所の酒屋で152円(税抜き)で購入。 なお、公式サイトによればメーカー小売希望価格は157円(税抜き)です。
上撰と佳撰は180mlなのに対し、淡麗辛口は200mlです。しかも価格は佳撰よりかなり安いです。 この商品には糖類と酸味料が添加されています。 安かろう、悪かろうの酒でしょうか? あまり気が進みませんが、飲んでみます。
★参考(公式サイトより) アルコール度数:13% 日本酒度:+5 酸度:1.1 味わいの特徴:辛口・淡麗
辛口を謳う酒によくあることですが、全然辛くありません。むしろ少し甘いです。 淡麗なのは本当です。てか味が薄い!
不味くはないですが、薄すぎです。
●ワンカップ大関 ミニ大吟醸Premium
ファミリーマートで150円(税抜き)購入しました。 なお、公式サイトによればメーカー小売希望価格は150円(税抜き)です なお、ミニ(100ml)じゃない普通サイズの商品(180ml)もありますが、それのメーカー小売希望価格は254円です。 大吟醸ですが、上撰と較べてそれほど高いわけではなく、庶民的と言っていい価格です。 以前、日本盛の安い大吟醸を飲んだことがあるのですが、期待を大きく裏切る味だったので、今回はあまり期待せずに飲んでみました。
★参考(公式サイトより) アルコール度数:15% 日本酒度:+4 酸度:1.3 味わいの特徴:やや辛口・淡麗
…。 期待しなくて良かったです。 全然吟醸香がしないです。 気持ち、上撰や佳撰より香りは良いですが、とても大吟醸とは思えないぐらいの薄さです。 味わいも普通。 まあ、値段的には仕方ないか。
●ワンカップ大関 大吟醸(Gold)
この商品は公式サイトには載っていませんが、イオンで販売していたので買ってみました。値段はPremiumと同程度です。 Premiumと同じく大吟醸ですが、差はあるのでしょうか?
うーん、Premium同様、大吟醸と思えない香りの薄さ。 味わいもPremiumと違いが分かりません…。
<どの商品が最もおすすめか?>
今回試してみた商品の味と、値段を考慮した総合評価を点数化してみました。
上撰 味:50点 総合評価:50点
佳撰 味:55点 総合評価:60点
淡麗辛口 味:50点 総合評価:60点
ミニ大吟醸Premium 味:60点 総合評価:50点
大吟醸Gold 味:60点 総合評価:50点
似たり寄ったりかもしれませんが、一応、佳撰と淡麗辛口がおすすめです。
ワンカップ大関に味は期待しない方がいいと思いますが、かと言って私はワンカップ大関を低く評価しているわけではありません。 ワンカップは手軽にどこでもすぐに飲める便利さが売りであって、美味い酒が飲みたいなら他の銘柄を選べばよいだけです。 なので、ワンカップ大関の味の評価など、そもそもが野暮な行為だったのかもしれません。
<食事との相性>
閉店間際のスーパーで割引のカツオのたたきを買ってきたので、一緒に飲み食いしてみました。 古いので結構生臭いカツオでした…。
ワンカップ大関はさっぱりしているように感じましたが、カツオの生臭さを一瞬で消すぐらいの強さがありました。意外でした。 かと言って、風味は控えめなので、カツオの旨味を邪魔することもありません。
今回はカツオだけでしたが、どんな料理にも合いそうな(少なくとも料理の邪魔はしない)気はします。
<実はワンカップ大関は安くない?>
カップ酒はワンカップ大関以外でも多くの商品が存在します。 実はその中でもワンカップ大関はやや高い部類に入ります。
ワンカップ大関上撰は近所のスーパーで168円(税抜き)で販売されていましたが、同じスーパーで「月桂冠 月」は128円(税抜き)、「白鶴 まるカップ」は132円(税抜き)で販売されています。 更にカップ酒ではありませんが、パック酒ならもっと安くて例えば「かみなり三代」なら88円という安さです。
本当に金がなくて、ただ酔っ払いたいだけならワンカップ大関じゃなくて他のもっと安い酒があるのです。
それでも大関が選ばれるのは、やはり味がマシだからではないでしょうか。
なお、大関とそれ以外のカップ酒(上撰白鶴、上撰月桂冠)の比較も次回に予定しています。乞うご期待。
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